2012年6月25日月曜日

『スティーブ・ジョブズ』ウォルター・アイザックソン

【オススメ書籍紹介】『スティーブ・ジョブズ』ウォルター・アイザックソン
(レビュアー:マーケッター/デザイナー 酒井)

この本はテクノロジーの近代史としても、リーダーシップ論としても、マーケティング論としても読むことができますが、そのすべての根幹となっているのが“決して妥協しないジョブズ氏の姿勢”です。

2011年の暮れに発売され、日本国内だけでも10日で計100万部以上を売り上げた大ベストセラー。
アップルを立ち上げ、ピクサーを立ち上げ、世の中に次々と革新をもたらした「故スティーブ・ジョブズ氏」公認の伝記です。
気になってはいるものの、その文章量の多さや価格から「まだ手に取っていない」という方も多いのではないでしょうか。



例えば、テクノロジー分野には“オープン化”の圧力が強く働いています。
オープンソースやFacebookのオープン化に見られるように、集合知を活用して価値を高めていこうという大きな潮流があります。
分かりやすい例として代表的なのが「ウィキペディア」です。
ウィキペディアは誰もが参加して編集することができる百科事典です。
編集者が増えれば増えるほど情報量が増え、百科事典としての価値を高めていきます。
平たく言うと「みんなで良くしていきましょう」というのがオープン化です。
パソコン部品のモジュール化やISOのような標準化団体なども、同様に「みんなで良くしていきましょう」を支援することを目的としています。


一方でアップルは設立以来、このオープン化に反し続けています。
「徹底的にクローズにすることでユーザー体験をコントロールする」という思想を持っています。
オープン戦略のデメリットは、様々な規格を吸収するために余分が生じることと、様々な機関が関わるためにクオリティを統一できないことです。
アップルはクローズド戦略を取ることで第三者の協力を得ない代わりに、余分を排除し、クオリティを担保しています。
iOSアプリはオープン化されていますが、コンセプトから操作性に至るまで厳しい審査基準を設けることによってそのクオリティをコントロールしています。

クローズド戦略に妥協は許されません。
妥協してクオリティに傷がつけば、クローズドにしている意味がなくなってしまいます。
アップルはこの戦略のもと、iMac・iTunes・iPhoneなど素晴らしいユーザー体験を生み続けて、2011年には時価総額で全米1位にまで上りつめました。
その背景には徹底した妥協の排除があります。

妥協の排除は個人の努力だけで実現するようなものではありません。
従業員に考えられないようなストレスを生みます。
ときには数年かけて進行していた製品開発を白紙に戻すような意思決定がなされ、優秀な従業員の自主退職を誘発します。


どうすれば妥協を排除することができるのか。
それはどういった副作用をもたらすのか。
この本からは「妥協しない」ということの本質を読み取ることができます。

『まつもとゆきひろ コードの未来』まつもと ゆきひろ

【オススメ書籍紹介】『まつもとゆきひろ コードの未来』まつもと ゆきひろ
(レビュアー:エンジニア 久保田)

rubyの生みの親まつもとゆきひろさんが本を出したということで早速買って読んでみました。

知ってはいたけどよくわからなかった話題や、
なんか流行ってんなという話題について、
なぜ流行っているのか、どういうメリットがあるのか
どんなデメリットがあるのか等、総合的に理解できました。


前半部分では過去から現在を振り返り、ムーアの法則にあるように
劇的に変化してきたCPUのクロック数やハードディスク容量を元に
変化が激しすぎて10年後のような遠い未来を予想するのは困難だと断りながら、
最近の潮流が近い将来も続くだろうというエクストリーム予想
を駆使して、近未来の予想をしています。

全体的に技術書というよりは読み物よりな内容で、
ここまでは非技術者の方が読んでも楽しめるかと思います。

後半部分では前半で予想したコードの未来に沿った
今あるHOTなトピックを取り上げてその意味と、
簡単な使い方を紹介してくれています。
(Go/Dart/Rack/MongoDB etc.)


業務では使わない新しい技術のさわりを知れることは
非常に刺激的です。

「コードの未来」を読んで自分の未来を考えてみるのも
良いかもしれませんね。