2012年11月26日月曜日

『ビジョナリー・カンパニー4 自分の意志で偉大になる』ジム・コリンズ モートン・ハンセン

『ビジョナリー・カンパニー4 自分の意志で偉大になる』ジム・コリンズ モートン・ハンセン
(レビュアー:マーケター/デザイナー 酒井)

原発の諸事に象徴されるように、
「想定外」「失敗」というのは非常に怖いもので、確率としては低くても、
一度起こってしまえば取り返しのつかないインパクトを持っています。

私個人としてはもちろん、
ランチェスターとしても、失敗をして、お客様にご迷惑をおかけしてしまうことが残念ながらあります。
この「失敗を仕組みとしていかになくすか」ということをテーマにして、
ランチェスター書籍紹介チームはこれから4回に渡ってリスクマネジメントの本を集中的に読み、
ご紹介し、最終的には具体的な対策を考えていきます。


第1回目に取り上げるのは「ビジョナリー・カンパニー4」です。
このシリーズでは様々な切り口から「優れた企業」と「すごく優れた企業」の行動特性を比較し、
「すごく優れた企業」を目指すためのエッセンスを抽出していきます。

本書の焦点は「いかに不運を乗り越えて継続的な成長を遂げるか」というところにあります。
どんな企業でも幸運に恵まれたり不運に襲われたりすることがあります。
企業努力とは関係のない、コントロールできない要素が世の中にたくさんあります。
このコントロールできない幸運を最大限に活かし、不運を最小限の被害にとどめるには、「咄嗟の対応よりも普段からの備えがものを言う」というのが本書の主張です。

本書では冒険家の実例を多数引用しています。
例えば同時に南極の制覇を目指した2人の冒険家を引用します。
片方が予定よりも行程を大幅に遅延させた上にメンバー全員が帰路で亡くなってしまったのに対して、
片方はできる限りの準備をして、実際に冒険が始まってからは気候が良くても悪くても一定のペースを保ち、予定通りのスケジュールで制覇して全員生還した、という話です。
「できる限りの準備」には北極圏のエスキモーに弟子入りして生活の知恵を学んだり、イルカをなまで食べられるかを試したりといった極端な行動も含まれています。

このエピソードに象徴されるように、できる限りの準備をすることによって、また成長速度を一定に保つことによって、企業は不測の自体にも大きく左右されることなく前進を続けることができます。

例えば社内でインフルエンザが流行したとしても、あらかじめスケジュールにバッファを持ち、普段から外部パートナーと懇意にして意思疎通をスムーズにしておけば、納期に影響を与えることなく作業を進めることができる可能性が劇的に高まります。
企業としても、仮に日本国際がデフォルトして一時的に日本の景気が壊滅的になったとしても、十分な内部留保があればその間に優秀な人材を獲得したり、新しいサービスの開発を行ったりと、建設的な経済活動を続けることができます。


備えること。
余裕を持つこと。
無知や見過ごしを原因とする失敗をなくすように努めることは当然ですが、
不測の事態を原因とする失敗を最小限にとどめる体制を意識することも、非常に大切です。

2012年11月7日水曜日

『Linuxカーネル2.6解読室』高橋浩和 小田逸郎 山幡為佐久

ソフトバンククリエイティブ
発売日:2006-11-18

『Linuxカーネル2.6解読室』高橋浩和 小田逸郎 山幡為佐久
(レビュアー:エンジニア 久保田)

この本は書籍名にある通りLinuxカーネルのバージョン2.6について解説してくれている書籍です。

OSもアプリケーションと同じでプログラミングで動作しています。
このOSの基本機能を実装しているソフトウェアがカーネルです。
カーネルがどのような動作をしているかを知ることによって、
メモリ資源をより効率的に管理したり、万一バグが発生した際にも適切に対処できるようになります。

Linuxカーネルのコードは当時ですら500万行あったようです。
しかも現在は1500万行を超えたとか。
そんな量のコードを前にしたら読む前にビビって
「やっぱやめとこう」となりがちですが、この本ならたかだか500ページ。
ソースそのものにあたるよりも格段にとっつきやすいのではないでしょうか。
解説してくれているバージョンに関しては2.6と若干古い気はしますが、
2.6までをきちっとこの本で理解することには意味があるように思います。


本の構成としては、細かな実装の前に仕様の確認の章があり、
知識が若干不安でもなんとか読める形でまとめてくれています。

自分自身、カーネルのソースにふれるのは初めてで、
この本で抜粋されたソースを読むのだけでも大変でした。
しかし、大切な部分には一行単位で丁寧に解説をつけてくれてあり、
頑張って読み進めることでわかった気にさせてくれます。

特に構造体のメンバを表にまとめてくれていたり、
ソースコードのフロー図を書いて構造をわかりやすくしてくれていたりと
全体の構造を俯瞰するためのヒントが満載です。

まだまだ理解したとは言い難いですが、
個人的に意味があったことは全体を読み切ることで、
なんとなくカーネルが怖く無くなった気がしていることです。
この本を傍らにカーネルソースに挑戦してみよう!
という気にさせてくれます。

そんな意味でもオススメの一冊です。